スレート屋根とは?種類や耐用年数などについて解説

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スレート屋根とは?種類や耐用年数などについて解説

「スレート屋根」は国内で広く使われている屋根ですが、どのような屋根のことかご存知でしょうか。

この記事ではスレート屋根の定義や種類、耐用年数について解説します。またスレート屋根を選ぶメリットやデメリット、法規制がなされたアスベストとの関係性、メンテナンス方法も紹介します。

スレート屋根とは

スレート屋根とは薄い板状の屋根材のことで、スレートとは天然石である粘板岩(ねんばんがん)を意味しています。

一般的な市場で普及しているのは、主成分がセメントでできた「化粧スレート」と呼ばれるスレート屋根です。国内では住宅の屋根材として広く普及しており、特に色がついたスレート屋根は、戸建て住宅の屋根材として人気があります。

粘板岩が使われたスレート屋根は「天然スレート」と呼ばれ、高級な屋根材として知られており、実際にはあまり見かけないのが現状です。

スレート屋根の構造は、瓦屋根などほかの種類の屋根構造と似ています。合板の上に防水シートを敷き、その上に屋根材を配置する構造です。並べたスレート屋根を接着剤や釘で固定し、上半分に新たなスレート屋根を重ね張りしていくことで、雨漏りなどを防ぎます。

なお瓦屋根は桟木(さんぎ)という瓦を留めるための角材が必要ですが、スレート屋根はこの角材が不要なため、簡単に施工ができるという特徴があります。

またスレート屋根は「コロニアル」「平板(へいばん)スレート」「カラーベスト」などと呼ばれることがありますが、これはスレート屋根の商品名を指しており、スレート屋根と同義と捉えて問題ありません。

スレート屋根の4つの種類

先に説明したように、スレート屋根には天然石で作られた天然スレートと、セメントに繊維などを混ぜた成分で作られた化粧スレートがあります。化粧スレートの中でも混合材の違いによってさまざまな種類がありますので、天然スレートの説明と併せて詳しく見ていきましょう。

天然スレート

「天然スレート」とは天然石の粘板岩を含む高級なスレート屋根です。天然スレートはデザイン性の高い屋根が実現でき、耐久性が高く、色が褪せにくいという特徴があります。

天然スレートは東京駅の屋根などで使われていますが、素材の希少性が高く、高度な施工技術も必要なことなどから、市場ではあまり普及していません。

石綿スレート

「石綿スレート」は価格が安く軽量であることから、過去に広く使われていたスレート屋根です。石綿スレートは健康被害へのリスクがあるアスベスト(石綿)が含まれているとして、2004年の法規制を期に製造、出荷が禁止されました。

なお法規制前に製造、着工したスレート屋根は、石綿スレートである可能性があります。屋根の張り替えなどの目的で石綿スレートを解体する際には、アスベストが飛散する可能性があるため、特別な対処や別途工事費用がかかります。

無石綿スレート

「無石綿スレート」はパルプやビニロンが含まれるスレート屋根で、アスベストを含まないスレートです。石綿スレートの製造や出荷が禁止されてから開発されました。

無石綿スレートは軽量かつ耐久性が高いのが特徴で、現在の市場で主流のスレート屋根です。

セメント系スレート

「セメント系スレート」は主成分がセメントのスレート屋根です。表面を着色できるのが特徴ですが、着色した場合には経年劣化によって色あせが発生することがあります。

スレート屋根のメリット・デメリット

さまざまな種類がある屋根材のなかで、スレート屋根は国内で広く普及しました。ではスレート屋根を選ぶとどのようなメリットやデメリットがあるのか、具体例を交えながら紹介します。

スレート屋根のメリット

価格が安い

スレート屋根は施工にあたり必要な部材が少なく、瓦屋根や金属屋根などのほかの屋根材と比べると商品価格が安い傾向があります。施工も簡単で工期が短く済み、施工費用も抑えられるので、全体の費用を抑えたい人におすすめです。

耐火性や耐熱性が高い

スレート屋根は熱伝導が低いため、耐火性や耐熱性が高く、火事や落雷などが起きても燃えにくいのが特徴です。大切な家を守る屋根の耐火性や耐熱性が高いのは、防災面からもメリットだと言えます。

腐りにくい

スレート屋根は水気や湿気に強く、腐りにくい特徴があります。その理由はスレート屋根が上地の屋根材と、下地部分の防水シートおよび合板でできた3層構造だからです。

第1層の屋根材は混合材に繊維を含む関係で、水分を吸収したのちに外へ排出する性質があります。屋根材の下に染み出た余分な水分は第2層の防水シートが受け止めるため、第3層の合板まで水分が届かず、腐りにくいのです。

色やデザインが豊富

スレート屋根にはさまざまな質感や形状に種類があり、デザインが豊富です。色味も豊富で、黒や茶色などの定番色に加えて、青や緑の商品も展開されています。

また材質や構造上、デザイン性の高い屋根の形にも対応でき、表面を着色できるセメント系スレートでは好みの配色にすることも可能です。

スレート屋根のデメリット

耐久性が低い

スレート屋根はセメント製とはいえ薄い板なので、ほかの屋根材と比べると耐久性が低いというデメリットがあります。強風や雨などの外的要因でヒビが入ったり割れたりすることがあり、雨漏りやすきま風などの原因となるため、メンテナンスをしながら使い続ける必要があります。

メンテナンスの手間がかかる

スレート屋根を安心して使い続けるためには、専門業者による定期的な点検や補修が必要です。瓦屋根や金属屋根の場合は異常を見つけた際の点検でも問題ありませんが、スレート屋根は5年ごとのメンテナンスが推奨されています。このように、ほかの屋根材よりもメンテナンスの手間がかかるのがデメリットの1つと言えるでしょう。

比較的汚れやすい

表面に凹凸があるスレート屋根は、埃や砂がつきやすい傾向にあります。汚れによってスレート屋根自体の劣化が進むことはありませんが、美観を損なう場合は定期的な洗浄が必要です。

スレート屋根とアスベストの関係性

かつてスレート屋根の混合材として重宝されていたアスベストですが、次第にアスベスト吸入によって肺線維症などのリスクが高まる可能性が指摘されるなど、健康被害が問題となりました。

その後、法規制が行われ、スレート屋根の材質に変化が生じるなどスレート屋根を取り巻く環境は大きく変わりました。

ここでは、スレート屋根とアスベストの関係性について説明していきます。

2004年の法規制

スレート屋根の解体時に飛散したアスベストを吸入することで、肺線維症や悪性中皮腫などの健康被害を引き起こす可能性が指摘されるようになりました。

2004年には法規制が施行され、アスベストを含む商品の製造や出荷は禁止となりました。そのため2005年以降に設置されたスレート屋根には、アスベストが含まれていません。

アスベストの処分は高額で負担がかかる

経年劣化や屋根材の張り替えなどにより、アスベストを含む古いスレート屋根の廃棄を行う場合には、専門業者による施工が義務づけられています。

アスベストを含んだ廃材の処分費用は30〜50万円ほどと高額で、所有者に大きな負担がかかります。また施工時に健康被害のリスクもあるため、作業者への安全性も懸念されます。

しかし未だ、日本各地にはアスベストを含むスレート屋根が残っているのが現状です。

アスベストがないことで強度や耐用年数が問題視されている

アスベストはかつて建材を割れにくく丈夫にする効果があるとして重宝され、1990年前半頃までに製造されたアスベストを含む第1世代のスレート屋根は、耐用年数が35〜40年ほどありました。

次第にアスベスト吸入による健康被害が問題視され、2000年中頃までの間、第2世代となるノンアスベストのスレート屋根が製造されるようになります。この時代に製造された製品の耐用年数は15〜25年ほどと短めで、かつ商品や製造ロットによって急速な劣化が見られることがあるなど、不具合が多いことが指摘されています。

2004年の法規制を経て、耐用年数が30年ほどと長い第3世代のスレート屋根が販売されるようになりました。

しかし第2世代のスレート屋根については、屋根に割れが生じるなどの被害が未だに問題視されています。

スレート屋根の主なメンテナンス方法

スレート屋根のメンテナンスは専門業者に依頼をしましょう。メンテナンス方法は塗装、葺き替え(ふきかえ)、カバー工法の3種類があります。

塗装

年月の経ったスレート屋根の色あせが気になる場合や、美観を良くする場合、リフォーム目的などには、スレート屋根の塗装がおすすめです。塗装費用は塗る面積や使用する塗料にもよりますが、40〜60万円ほどが相場です。なお塗装によって屋根の耐久性や防水性が上がる効果はありません。

葺き替え

「葺き替え」とは、古い屋根を撤去し新たな屋根を設置する方法です。ヒビや割れが生じた箇所を部分的に新しい屋根に差し替えることもできますし、屋根全面を差し替えることもできます。

部分的な葺き替えの場合、費用は1枚あたり2〜4万円ほどです。全面葺き替えの費用は屋根面積や屋根材などにもよりますが、145〜165万円ほどとなる可能性があります。なお古い屋根にアスベストが含まれる場合には、別途で処分費用が加算されますのでご注意ください。

カバー工法

「カバー工法」とは、古い屋根の上に新しい屋根を張る方法です。古い屋根の撤去費用や処分費用がかからない分、費用は80〜120万円ほどと葺き替えに比べて安く抑えられるのがメリットです。

ただし古い屋根のヒビや割れはそのまま残ること、後に問題が起きて工事を行う場合に余分な費用がかかることなど、デメリットもあります。そのためカバー工法は予算が不足している、または10年以内の退去や解体予定があるなど、条件がある場合に検討する方法と言えるでしょう。

まとめ

スレート屋根は法規制前の屋根材処分に関する問題はありつつも、費用面やデザイン性の高さなどから国内で広く普及しています。法規制後は健康を考慮した種類が開発され、次第に耐用年数も長期化していきました。

ただしほかの屋根材に比べると耐久性が低いことから、安心して使い続けるためにも定期点検を行い、適切なメンテナンスを行うようにしましょう。

執筆年月日:2024年9月

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