遺品整理とは?業者に依頼した場合の費用や手順などを紹介
家族や親族の他界後、故人が自宅などに残した物を整理する「遺品整理」を行う必要があります。特に初めての遺品整理である場合、どのように進めれば良いのか戸惑う方も多いでしょう。
この記事では、遺品整理について詳しく解説するとともに、業者に依頼した場合の費用や手順など、気になるポイントをご紹介します。
遺品整理とは
遺品整理とは、故人が残した物品を整理・処分する作業のことです。
「遺品」とは、故人が生前に所有していた物を指し、身の回りの物、大型家電、貴重品、思い出の品までさまざまな物が含まれます。
また、近年では「デジタル遺品」と呼ばれる、故人のインターネット上のアカウントやアプリが残っていることもあり、これらも含めて整理する必要があります。
遺品は、故人やその家族の思い出が詰まったものでもあるため、遺品の整理や処分を行う際は慎重に進めていきましょう。
遺品整理と生前整理の違い
遺品整理に対して、「生前整理」という言葉があります。
どちらも自宅などに保管している物品の整理に関する作業のことですが、目的やタイミング、実施者が異なるところがポイントです。
遺品整理と生前整理の違いについては以下の通りです。
主な違い |
遺品整理 |
生前整理 |
---|---|---|
実施者 |
遺族 |
本人 |
目的 |
故人の身の回りの物品の処分 |
自分の持ち物の処分 相続や終末期の準備 家族の負担軽減 |
タイミング |
亡くなった後 |
本人が生きているうち |
上記のことから、遺品整理は「故人のための作業」、生前整理は「自分自身と残された家族のための作業」と言えるでしょう。
遺品整理は誰がやるべき?
遺品整理は通常、遺族や親族が行いますが、遺族の心理的・体力的にも大きな負担となることがあるため、専門の業者に依頼することもあります。
ここからは、誰が遺品整理をするのかという疑問について解説します。
法定相続人
故人の配偶者や子ども、親など、民法により相続権のある人のことを法定相続人と呼びます。この法定相続人が中心となって遺品整理を行うことが一般的です。
故人の法律上の婚姻関係にあたる配偶者は、必ず法定相続人となり、相続をする権利を持ちます。
血族の法律上の相続順位は以下のとおり定められています。
第1順位 故人の子ども(第1順位の子が既に死亡していた場合は、その子ども(孫)が相続人)
第2順位 故人の親、祖父母(直系尊属)
第3順位 故人の兄弟姉妹
相続人が複数いる場合は、全員で話し合った上で整理を始めましょう。
スケジュール調整や各々の意志の尊重が難しい場合もありますが、遺品整理を円滑に進めるためにも、確実に関係者全員でコミュニケーションを取る必要があります。
遺言相続による相続人
相続人について、故人が遺言状を残していた場合、その遺言状に記載された内容に基づいて相続人が決まります。
遺言状に「〇〇に遺産を相続する」など、故人の意志が明記されていた場合、その人が相続人となります。
故人の遺志に基づいて相続人の決定や財産の分配がされることを遺言相続と呼び、法的に強い効力を持つ手続きです。
しかし、遺品整理を行う途中に遺言状が発見されるケースもあります。
その場合は勝手に開封せず、家庭裁判所に検認を実施してもらいましょう。
相続放棄する場合は行政
故人に負債が多く残されている場合、法定相続人は「相続放棄」をすることができます。
相続放棄とは、故人の遺産や負債を放棄する手続きのことです。これにより、第1順位の法定相続人は遺品を整理する権利がなくなり、次の順位にあたる人が作業を託されることになります。
万が一、法定相続人が全員相続放棄をした場合、家庭裁判所が相続管理人を選任し、その人が遺産の管理及び遺品の整理を行うこととなります。
相続を放棄した人は一切の作業を相続管理人に任せる必要があり、少しでも資産価値のあるものを整理すると、遺産を相続するものとみなされるので注意が必要です。
相続放棄は取り消すことができないため、安易に放棄することは避けるべきだと言えるでしょう。
遺品整理はいつから始めるべき?
家族や親戚が亡くなったあと、遺族はさまざまな手続きに追われるため、遺品整理のタイミングを見計らうことは非常に難しいものです。
しかし、遺品整理は遺族の心の整理にもつながります。相続人それぞれの事情にあわせてスケジュールを組むと良いでしょう。
以下に遺品整理を始める時期の目安をご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
賃貸物件の契約期限まで
故人がマンションやアパートなどの賃貸物件に住んでいた場合、解約の手続きを行わなければ、住人が亡くなったあとも家賃や更新費用が発生し続けます。
管理会社に賃貸契約期間を確認し、賃貸物件の契約期限までに遺品整理を行うと、経済的な負担を避けることができるでしょう。
葬儀直後
葬儀直後は家族や親戚が集まっていることが多いため、遺品整理についての話し合いや作業を進めやすい環境です。
特に相続人が遠方に住んでいる場合は、遺品整理のために再び故人宅へ足を運ぶことは負担になることもあります。精神的に辛い時期ではありますが、このタイミングを利用すると、遺品整理を円滑に進めやすいでしょう。
諸手続きが完了した後
家族の死亡後、遺族はさまざまな事務手続きをしなければなりません。
死亡診断書の取得から、死亡届の提出、公共料金や銀行口座の解約など、早めに行うべき手続きも複数あります。これらのプロセスを終えた後に遺品整理に着手することで、相続財産の把握や手続きがスムーズに進むでしょう。
四十九日法要後
四十九日法要は、亡くなった人の命日から数えて49日目に行われる法要です。
家族、親族が一堂に会し、故人の成仏を願う日であり、故人にとっても家族や親族にとっても区切りになる日です。法要を終えたあとは、遺品整理について話し合う機会を持ちやすいでしょう。
相続税の申告前
相続税の申告手続きは「被相続人が死亡したことを知った翌日から10カ月以内」に申告しなければなりません。
遺品整理を通じて、相続財産を把握しておくと、申告手続きがスムーズに実施できます。
そのため、7〜8カ月以内に遺品整理を終わらせていると良いでしょう。
遺品整理の前に行うべきこと
遺品整理の前に行うべき具体的な内容は以下の通りです。
- 遺言書やエンディングノートの有無を確認し、保管場所を探す
- 遺言書などがあれば、その内容により相続人を特定する
- 相続する財産の内容の確認
- 故人の遺品の中から形見を選定する
遺言書やエンディングノート、預金通帳および印鑑は故人の遺品の中に保管されていることが多いです。自宅内の確認や、家族・親族への確認作業を行い、遺品整理開始前に確実に見つけることが望ましいでしょう。
遺品整理の具体的な内容
遺品整理では、故人が所有していた物を整理し、不用品は処分する作業を行います。
作業の具体的な内容は以下の通りです。
- 遺品の分類
- 必要品と不用品の仕分け
- 不用品の処分
- 遺品の買取依頼
- 清掃
- 家、車、土地などの諸手続き
- 相続に関する手続き
この作業の中で難しいポイントは、必要品と不用品の仕分けです。
生活ゴミは不用品であることが明確なため、比較的処分しやすいですが、知識がない人が仕分け作業を実施した場合は、遺品に金銭的価値があるかの判断に迷うことがあるでしょう。分類の基準も個人の価値観によって変わってくるため、これらの作業は慎重に行う必要があります。
遺品整理を自分で行う場合
遺品整理を自分で行う場合は、効率的に進められるように計画を立てることが大切です。
遺品整理に必要な道具や整理の手順を明確にすることで、スムーズに作業を進めることができるでしょう。
遺品整理を自分で行う場合の手順
業者に依頼せず、自分で遺品整理を行う場合の具体的な手順と注意点は以下のとおりです。
- スケジュールを決める
- 役割分担を決める
- 遺言書やエンディングノートの有無を確認する
- 遺品整理の実施を相続人及び親族全員に伝えて合意を取る
- 遺品を貴重品、形見、売却、破棄に分類する
- 遺品整理を始める
注意点
- 遺品整理開始前に必ず相続人と親族の合意を得る
- 遺品整理を始めることを近隣住人に伝える
- 故人が賃貸物件に居住していた場合は、設備の持ち主を確認する
- 財産を処分しないよう、分類は確実に行う
これらの注意点を踏まえて遺品整理を実施することで、作業が円滑に進み、同時にトラブルの回避にも寄与することができます。
遺品整理を業者に依頼する場合
相続人の時間や人手、年齢などの問題により、遺品整理をすることが難しい場合は、遺品整理業者に依頼をすることができます。
遺品整理が初めてで不安があるという場合も、業者に依頼すれば、遺産整理の上手な進め方がわかるためおすすめです。選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
遺品整理を業者に依頼する場合の手順
遺品整理業者に作業を依頼する場合の手順をご紹介します。
- 業者へ問い合わせ
- ヒアリング及び現地確認
- 見積もり
- 打ち合わせ(成約・作業日決定)
- 作業開始
- 分別・搬出
- 作業後の室内清掃
- 作業終了後の確認・費用の支払い
複数業者から見積もりをとることにより、費用の適正価格を知ることができます。
遺品整理の専門業者に依頼するメリット
遺品整理のプロである専門業者に依頼することは、以下のようなメリットがあります。
- 専門知識と経験のあるスタッフに任せられる
- 時間の節約
- 精神的、体力的負担の軽減
- 査定・買取の依頼ができる
- 遺品の供養を依頼できる
個人で行うには難しいことでも、専門業者に依頼することでスムーズに進めることができるでしょう。
遺品整理の専門業者に依頼した場合の費用相場
遺品整理にかかる費用は家の広さや荷物の量・種類、作業人数によって異なります。
Backup 72
家の間取り |
費用相場 |
作業時間/作業人数 |
---|---|---|
1R/1K |
3~8万円 |
1~3時間/1~2名 |
1DK/2K |
5~12万円 |
2~4時間/2~3名 |
1LDK/2DK |
7~16万円 |
2~6時間/2~5名 |
2LDK/3DK |
12~20万円 |
3~10時間/3~7名 |
3LDK/4DK |
19~24万円 |
5~12時間/4~8名 |
4LDK/5DK~ |
23万円~ |
6~15時間/4名~ |
ここで紹介している費用はあくまでも目安であるため、正確な費用を知りたい場合は、業者に現地調査依頼をしてみてください。
遺品整理の専門業者選定のポイント
遺品整理専門業者が提供しているサービスはさまざまです。
自分や故人宅の状況に合った業者を選定することで、安心して作業を任せることができるでしょう。
業者を選定する際は以下のポイントを参考にしてみてください。
- 複数業者に相見積もりを依頼する
- 有資格者(遺品整理鑑定士)の在籍有無
- 不用品の処分・買取まで実施できるか
- 遺品の供養が可能か
- デジタル遺品の整理
- 相続に関する相談が可能か
値段の安さだけで判断せず、スタッフの対応やサポート体制も考慮した上で業者を選定すると、より安心してサービスを受けることができます。
まとめ
遺品整理は相続などお金に関連すること以外にも、故人を偲び、お別れをする目的も含まれています。故人の残したものを丁寧に整理することによって、悲しみも次第に和らいでいくでしょう。
遺品整理の実施は想像以上に時間と体力を必要とします。作業を開始するタイミングや方法を慎重に考えて行いましょう。時にはプロの力を借りながら、大切な遺品の整理を進めてみてください。
執筆年月日:2024年10月
※内容は2024年10月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。