記事作成:2015年6月

教育資金の贈与が「無税」でできる制度とは?
相続税対策に有効な非課税措置、その利用ポイントと注意点

税理士が教える相続税対策の基本
相続税対策の基本となる生前贈与。
贈与税の負担を軽減できる制度を上手に使って、効果的な対策を。

Q&A

読了時間の目安:5分

『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置』とは?

相続税は、一定以上の財産を相続すると課税される税金ですが、2015年1月の改正で基礎控除額が縮小されたことにより、課税対象者が増加しています。これまで、相続税の納税者は全体の約4%程度でしたが、今後は、約6~7%程度にまで増える見通しなのです。

言ってみれば、これまではおもに一部の資産家だけが対象だったのですが、自宅の不動産とちょっとした預金があれば課税対象になる可能性が出てきました。相続税に対する関心が高くなったことで、「税金がかかるなら何か対策をしなければ」と考える方も増加しています。

相続税対策として一番重要となるのは「生前贈与」。贈与によって相続財産をあらかじめ減らしておけば、相続税の対象となる課税価格が減らせるという考え方です。ところが、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。贈与税の税率は高く設定されているため、なかなかたくさんの財産を贈与できません。

こうした点を考慮し、教育資金を一括して贈与する場合は、一定の条件のもと、贈与税がかからないようにしようというのが、『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置』です。

『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置』利用のポイントは?

1)祖父母から孫への贈与

『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置』は、祖父母が孫(30歳未満)の「教育資金」として金銭等を贈与する場合に、孫1人につき1,500万円までなら贈与税を非課税とする制度です。親から子への贈与ではありませんので注意が必要です。

この場合の教育資金とは、教育を受けるために必要で社会通念上相当と認められるものをいい、たとえば以下のようなものが含まれます(学校等以外に支払うものは500万円が上限)。

  • 学校等の入学金、授業料、受験料など
  • 学校等で使用する文房具の購入費、修学旅行費、学校給食費など
  • 学習塾、習い事(水泳、ピアノ、野球、そろばんetc.)などの費用
  • 通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費

2)銀行等で教育資金口座を開設

制度の適用を受けるには、銀行等、教育資金口座の取り扱いがある金融機関で、専用の口座を開設する必要があります。手続きが済んだら、その口座へ贈与する金銭を預け入れ、受贈者(お金をもらった側)は、教育資金として支払った領収書等を銀行に提出し、払い出しを受けるという流れです(支払い後に口座から払い出す方法を選択した場合)。

すべての領収書等を保管し、提出するのは面倒かもしれませんが、手続きや口座の資金管理は金融機関がすべてやってくれます。

3)制度適用の終了

この制度が適用されるのは2019年3月31日までですが、以下の場合にも終了します。

  • 受贈者が30歳に達した場合
  • 受贈者が死亡した場合
  • 口座の残高が0になり、教育資金口座契約終了の合意があった場合

なお、終了時までに使い切れずに残った資金には、贈与税が課税されることになります。あくまでも1,500万円は上限なので、もし使い切れないことが想定される場合には、100万円、200万円というように小分けにして贈与するとよいでしょう(手続きはその都度必要です)。

制度の目的とは?

祖父母から孫へ財産を非課税で贈与できるというこの制度には、眠っている高齢者の財産を若い世代に移転させやすくする、ことで、子(孫の親)の世代の教育資金に関する不安が軽減するという目的があります。もっとも、国としては、贈与で浮いた分を消費に回してもらい、景気対策につなげたいという思惑もあるでしょう。

孫1人に1,500万円までですから、孫が3人いれば4,500万円。通常4,500万円の贈与には55%以上の贈与税が課税されますが、この制度を使えば無税となるので、非常にメリットが大きいといえます。しかし、とくに「相続=不動産」というイメージが強い地方ではまだまだご存知ない方も少なくありません。現金資産を多く持っている都市部のサラリーマンの方などは利用が多いようです。

相続税対策にはいろいろなものがありますが、生前に無税で贈与するのが一番。ただ、どの制度を使ったらよいか、というのは、すべての財産を把握してから個別に判断する必要があります。専門家である税理士なら、税務だけではなく、経済全体を考えた対策をご提案できますので、できるだけ早めに税理士に相談するのがおすすめです。

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